ホテルのカスハラ UGゲスト クレームに紛れる招かれざる客とその対応
UGとはホテル業界用語でUndesirable Guest 招かれざる客の意味。
要は迷惑な客ということですね。
カスタマーハラスメント(カスハラ)とういう言葉をよく耳にすると思います。
ホテルでは、お客さんをカスタマーと言うよりもゲストと呼んでます。
サービスに特化した環境とは裏腹に、度を超えたゲストクレーム、ハラスメントに苦しむと言う現実があります。
ホテルとして、もちろんUGは来て欲しくない存在です。
例えば支払い不良の人、精神的に異常な言動を繰り返す人、反社会的組織の人、もしくは暴力行為をする人などなど挙げればキリがないのですが、まず普通にお付き合いしたくない方々も含まれます。
UGはブラックリストの様なものなので、
ホテル同士は個人情報保護法に抵触しない範囲の匿名性をもって情報を共有する対策をしています。
つまりもしあなたがAホテルで理不尽に暴言を吐いて、お代を踏み倒して、ドアを蹴っ飛ばしながら立ち去ったとしたら、後日BホテルもCホテルも、DEFG、、、、ほぼ全てのホテルにあなたの情報が共有され、なんらかのの形で宿泊拒否を受ける可能性があります。
また被害届が出れば警察も関わり、全てのホテルが包囲網となるので悪いことはしちゃダメですね。
UGの分類
大体大きく分けると二つでしょう。
- 迷惑行為を行う人
- 詐欺行為を行う人
UGかな?
よく「どこからUGなのかがわからなくて」という話を耳にします。
実際に線引きが各ホテルで微妙なところはありますが、基本は実害のある人として定義するのが一般的ではないでしょうか。
そこで以下の様に根拠となる言動を把握する事が重要だと思います。
例えば
威圧的態度、過度なクレーム
支払い不良
精神異常や奇行・挙動不審
あたりが大半を占めます。
それぞれのケースで対応策や防御策は異なるので一つ一つ解説できればと思います。
威圧的態度、過度なクレーム
まずよくヤクザっぽい人とかガラの悪い人が怒鳴って、という様な高圧的もしくは威圧的態度が伴うケースでは様々な法律や条例などを理解した方がいいのです。(ホテル規約違反、迷惑防止条例違反、軽犯罪法違反、などなど)
結論から言うとどんな些細なものでも暴力行為があったり、土下座を強要されたり、脅迫めいた言葉が出てきた(それにより生命の危険を感じた)という時点で警察を呼ぶ方がいいでしょう。これらは実害が決定的な状態だと判断出来ます。
しかし困るのはこれはどうなんだろうと判断に迷うケースはあります。
退っ引きならない状況においては対応が難しく、UGなのかクレームなのかわからない!という場面に出くわした場合、
別の記事で対応策を載せてますので宜しければこちらをご参照ください。
支払い不良
UGの中で恐らく1番多いケースだと思います。
お金の支払いで揉める、もしくは払わないで出ていくスキッパーがこれですね。
なんでこれが1番多いのかっていうと、そもそもホテルのシステム上チェックアウト時に精算する仕組みからどうしてもこのことの問題が多いんですね。
まぁビジネスホテルはチェックイン時精算が多いのですが。
支払い不良じゃなくても、後から請求書を見せられてこれ知らない。もしくはこの金額がおかしい、なんて事は一般的に結構多いんじゃないでしょうか。
普遍的にあるお金の話に紛れやすく、初めから払う気がないのに払う素振りを見せてスキップアウトなんてされてはホテルとしてもたまったもんじゃないですよね。
ではまずリスクを減らす為の予防策を見ていきましょう。
予防策
- デポジット(預け金)を取る
- クレジットカードからオーソリを取る
- 到着時精算をする
- 利用制限を掛ける
- 宿泊拒否をする(出来る場合)
デポジット(預け金)を取る
現金を多めに預かる
もちろん余ったら返金になりますが、足りなかった場合回収する必要が出てきますので預かり金次第でリスクが変動します。
クレジットカードからオーソリを取る
レジストレーションカード(宿泊者名簿)にサインをもらい、クレジットカードからオーソリゼーションを取得する。
要はクレジットカードの枠を押さえて、何かあった場合そこに請求しますよと言う念書にサインをもらう仕組み。
ここでは利用額に応じて追加オーソリを取得するという対応策を取ることが出来ます。
もちろん限度額などでエラーが出てしまうと枠からはみ出た分を担保する必要が出てくるのですが一番有効策と言えます。
クレジットカードのオーソリについて詳しく別の記事で説明をしているのでこちらも合わせてどうぞ
到着時精算をする
決定している部屋代を先に精算する。
ウォークインや当日予約はこれやった方がいいですね。
これで部屋代だけは取りっぱぐれるリスクは減らせます。
で、更にクレジットカードや現金を預けて貰う合わせ技が一番確実でしょう。
制限を掛ける
部屋代等確定している分を支払って貰った状態で、追加のクレジットカードや現金を押さえられなかった場合の最終手段です。
物理的に部屋付け出来ないようにして、何かを利用したらその場で都度精算にもちこむ事で未払いを防ぎます。
お使いのホテルシステム上お部屋付けが出来なくなる機能を活用したり直接各部署に部屋付けしない様に連絡して注意喚起をします。
宿泊拒否をする(出来る場合)
最終手段というかもう最初から無理でーす!というパターンですね。
精算能力がないと判明している場合。例えば、財布がないとか。
あとは既に大声で喚き散らして迷惑行為をしているなどですが、これは先に警察ですかね。
まぁどっちにせよすでに論外な感じですが、でも現実にこういう人達本当にいるんですよね。
昔「お金ないんですけど、泊まれますか?」って言われて
「お金がなければ、お泊り頂けません」と丁寧に断った事があります。笑
とまあ支払い不良に対する予防策は基本的には以上の方法でしょう。
しかしUGと呼ばれる人達はこれでもあの手この手で掻い潜る人ばかりなので、悪質なケースではそれに見合う対応策が必要になります。
人間やはりお金が一番揉めるんですね。
精神異常や奇行・挙動不審
精神異常かな?
大半のUGが支払い不良系なのに対して明らかに精神疾患系の症状で結果ホテルにとって対処出来ない事態になる人たちもいます。
一般的に精神異常だの精神分裂だの聞くと、少し構える気持ちになるなも分かります。
もちろん全ての精神障害者がUGではありません。
当然健常者であろうが障害者であろうが人権を守り、同等に接しましょう。
しかしながら人間誰しもイライラしたり乱暴な言葉遣いになる時はあります。
ただやはり暴力沙汰になったり、物を壊されたりがある様であれば警察を呼びましょう。
残念ながら結果UGとなる人もいます。
しかし現場では少ない手掛かりのまま対応せざる得ない場面になりがちです。基本的に相手を尊重し、落ち着かせるように働きかける姿勢で臨みます。
まずは知ろう!
厚生労働省は主な精神障害として統合失調症、気分障害、てんかん、依存症、高次脳機能障害をあげてます。
(因みに精神分裂症は統合失調症の昔の呼ばれ方で全く同じ意味です。)
それぞれの症状を事前に知る事は話をする中での観察に役立つと思います。
イライラしたり大声をだしたりはUGや顧客のクレームでも見受けられますが、幻覚や妄想といった症状はかなり状況の違いを感じるはずです。
判断の難しい対応とはなりますが、ホテルの従業員は医者ではないので決めつけは厳禁です。
焦らず良く観察しながら対応します。
尊重しつつ、落ち着かせ、話せる状況で話をする事が大切です。基本的な意思疎通が出来ホテルの利用に問題なければ健常者と同じ様にサービスを提供します。
しかしホテルは病院ではないので宿泊サービスの範疇を越えれば結果宿泊をお断りして病院や施設等を案内するとなるケースもあります。発作を繰り返し起こしたり、アルコール中毒で寝たまま失禁したりを繰り返す人もいるので、その都度は速やかに救急車を呼ぶなどの迅速な対応が必要な時もありますが、そこまでいくと明らかにホテルでは手に負えない状況です。中には病院や施設から抜け出した人の可能性もあります。
一見対応の難しいところではありますが、各部署と情報共有をしてしっかり監視体制をとりましょう。迷ったらいつでも医療機関のアドバイスを求め、救急車の要請などを出来る様に構える必要はあります。
因みに救急車要請で迷う場面があれば119番の頭に”7”をつけると救急安心センター事業というところに繋がります。
ここでは救急電話相談を選択すると専門家が窓口で対応してくれて適切なアドバイスを施してくれるので迷ったらまずここに相談しましょう。
しかしながら暴力行為などに発展しそうな場合は警察を呼びましょう。従業員を含めて全ての人が危害を負わない様に努力する必要は常にあります。
まとめ
各ホテルで働く人は日々笑顔と共にサービスの向上と、涙と共にクレームやハラスメントに近い仕打ちに堪える場面の連続です。
しかし従業員も人間です。大事な人権を守る。人として守る事を憲法にもあるのです。
これからは皆んなが気持ちよくホテルでサービスを利用でき、提供できる時代になるべきです。
一人でもUndesirable Guest(望まれざる客)がDesirable Guest(望まれる客)となります事を切に願ってます。
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